キノイエセブンを支える仲間たち Vol.3
富野工務店
見た目を裏切るというのは、まさにこういうことをいうのだろう。富野工務店の二代目社長、富野龍次氏。野性味あふれる風貌といい、がっしりとした骨太の大柄な体格といい、見るからにガテン系、大工人生一直線という感じなのだけど、意外とIT系だったりする。大工の経験もない。大工は弟さんにまかせて、自らは受注と現場を管理してまわしていく役に徹しているのだという。
「意外だってよくいわれるんですけど、好きなんですよね。パソコンであれこれ工夫するのが。社会人になってボーナスを初めてもらったとき、普通なら車のローンだとかにあてるかもしれませんが、僕の場合、これからはCADの時代になるからとパソコンにほぼ全額つぎ込んで、そこからハマってしまったんです」という富野氏は、経営にもパソコンを駆使する。独学でExcelをカスタマイズして、日報から仕入れ台帳、実行予算、原価計算、収支計算等々、きめ細かく管理するシステムをつくったり、ホームページをゼロから自力でつくったりと、営業時間外にコツコツとつくってきたのだという。
富野工務店は社員7名の会社。富野社長の他は、父親が会長兼親方を努め、母親が経理、次男が大工と、自社大工3名という構成である。小規模でありながらすべて自社で一貫させるというのがポリシーだ。
「お客さまが毎日暮らす大切な家ですから、それを建てるには、やっぱり親方が育てた信頼できる大工でないとだめだと思っています。とくに木の家の場合はそうですね。作り付けの家具なんかも普通は家具屋さんにまかせますが、うちの場合、自社で平行板を導入して、狂いのないしっかりとしたものを自社で責任持ってつくっています」
高額をかけて家具を自社製作できる環境を整備するなど、冒頭のCADの話同様に、先を読んだ設備投資をしている。また、経営者向けの有料セミナーなどにも積極的に参加するなど実にこまめで勉強家なのである。
見た目はガテン系。その実態はPCを駆使して合理化経営を実践する、まめな工夫人、富野龍次社長。
写真中央が父であり会長兼親方の富野次夫氏。右が母、笛子(しょうこ)さん。
笛子さんは、富野工務店の経理を担当している。
「この前も経営者のための本を読んでいて、名刺にただ名前と社名が載っているだけじゃもったいない。セールスポイントも載せて営業ツールとして機能させようみたいなことが書いてあったので、なるほどと思ってすぐに自社の名刺を変えました」と、思い立ってからの行動も早い。「富野工務店さんにまかせると手間がかからなくて楽だ」という建築家からの評判も、富野社長のこうしたこまめな努力によって築き上げられたものなのだろう。
次男の龍哉氏は大工として富野工務店を支えている。
スクエアなフォルムが印象的な富野工務店事務所は富野社長自らの設計で建てた。
自社の大工にこだわる富野工務店の手仕事の評判は高い。
富野社長のデスクにはパソコンが二台並び、こちらで現場や経営のきめ細かい管理をしている。
つくりつけの家具を作るために機械の設備投資をした水平板。加工の正確さはもちろん、人工(にんく)的なコストも大きく変わる。
ショールームでは、木材だけでなく、木のぬくもりが魅力の雑貨小物や家具も扱っている。
クレーン完備の大きな作業場。職人の技と充実した設備で富野工務店の品質は支えられている。