暑い夏が一休みした雨模様の日、練馬にある根來さん設計の住宅を訪問しました。根來さんと言えば、セブンの中ではモダンでクールな住宅をつくる人、そのつもりで伺ったのですが意外や意外、気配りの行き届いた木の家がそこにありました。
端正な外観です。外壁は焼杉で仕上げてあり、北の道路側に窓はありません。左の路地を入って行くと、奥に玄関があります。ちなみに当初は白い漆喰を要望されたのですが、予算調整のために焼杉となったそうです。アプローチの床は外壁に合わせ炭入りモルタルとし、目地を切ったデザインです。
閉ざされた感じの外観から玄関土間を経て家の中に入ると、上の方から光が下りてきます。キッチンの上が吹き抜けになっていて、二階の寝室に面した中庭テラスの大きなフィクス窓からの光でした。都市住宅では窓を設けても隣が近く、カーテンを締め切りとなりがちですが、これなら大きなガラス窓から空が見え、たっぷりの光が入ってきます。壁は卵の殻を再利用した塗り壁で、床は無垢板、天井は唐松パネルの現し。施主さんからは合板を使わないで欲しいとの要望があったそうです。
玄関を入って直ぐのキッチンカウンター。厚みのある吉野杉の天板は、施主さんが用意したものだそうです。玄関土間とは引戸で目隠しできるようになっていました。床は飫肥杉の厚板30mm。キッチンはオールステンレスでつくったオリジナルの厨房仕様です。
キッチンから南に面した食堂を見る。左側が玄関土間。キッチンは食堂に座った人の目線の高さに合わせるため、一段下がっています。段差が分かりやすいようにと、床の色を敢えて変えているそうです。気配りしていますね。
南側開口、木製デッキの内側が全開口で引き込まれているアルミサッシ。外側には防犯と目隠しを兼ねたガラリ戸があり、これも引き込むことができます。
二階の吹き抜けに面した廊下。プランターにゴーヤーを植えていました。ご夫婦二人のお住まいということもあり、とてもきれいにお住まいで、住み手のセンスのよさが伝わるモノがあちこちに置いてありました。
吹き抜けに面したキャットウオークで窓の掃除もできます。
寝室から中庭と廊下を見る。寝室の窓は全開口できます。ぽっかり空いたプライベート空間では、裸で夕涼みができるそうです。
玄関脇には土間に続くウォークスルーの収納と洗面台があります。建具は合板を使えないため和紙を貼っており、和の雰囲気が素敵でした。
笑顔で取材にお応え頂いたご夫妻に、セブンの中で根來さんに決めたのはなぜ?とお聞きしたら「変わったことをやりそうだったから」と満足そう。モダンでクールな根來さんは、実は気配り・木配りの得意な建築家でもありました。
(設計:根來宏典建築研究所・根來宏典/レポート:松原正明建築設計室・松原正明)
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