
小野育代さんが手掛けた『時を編む住まい(マンションリノベーション)』。白いフレームにアンティークガラスの扉、オーナーの以前の住まいにあった建具だそうです。60年前に作られたものらしく、暮らしの変遷とともに、60年、20年、そして現在へと時を刻むもの。最も出入りの多い玄関ギャラリーとLDKとの境に設けております。廊下幅よりも狭い古建具。余った隙間には新しく製作した子扉を設け、親子扉に。扉上部には躯体の梁があるのですが、その隙間には跳ね上げ式の欄間。古建具を閉めていても風が通り抜けるよう配慮しています。一体的に造作しつつも、古いものと新しいものを、どちらかに似せるのではなく、ありのままを違和感なく並ぶように工夫したそうです。
ちなみになのですが、コンクリート壁沿いの左手はトイレ。右手にある木柱を角とし、二枚の引戸を直角に設けております。オーナーが高齢になった時、トイレでの介護がしやすくなるように二方向アクセスにしています。気の利いたプランニングですね。
建具を単なる出入口として捉えるのではなく、生活のシチュエーションに応じた要素を盛り込むことによって、暮らしが豊かになり、その暮らしとともに建具や住まいへの愛着が増すだろう事例を見たように思います。
雑司ヶ谷のマンションリノベ/設計:小野育代 文:根來宏典 (photo by Ippei Shinzawa)
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