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原木市場---処分場????


以前に、林業に関心のある方々を

埼玉県の西川材の原木市場にご案内してきました。

原木市場とは山で切り出した丸太を取引する市場です。

市場開催日には近くの山から切り出された丸太の山が幾つも山積みになって、なかなか壮観な眺めになります。

ただ、我々が行った時はちょうど市場の次の日だったので丸太は買い手にほとんど引き取られていたので壮観な眺めは見ることは出来ませんでしたが、今でも市場としては賑わっているようでした。

その時、原木市場に勤めて40年にもなるかという長老さんにご案内いただくことが出来ました。

西川材は古くから有名な良材の産地です。

良材とはまっすぐに通った丸太で、節が少なく杢目のきれいな、建築材料として価値が高い商品がとれる木です。良材は自然にはなかなか出来ません。人の手をかけて育て上げるものです。西川材のエリアは古くから手塩にかけて育てた良材が取れるところです。

良材には、それなりの適正な価格か、あるいはご祝儀価格のような高値で取引がされ、林業を持続的な生業とする活力となります。

ところが、市場の長老にお話を聞けば、今でも良材はあって市場には出て来るのですが売れないのだそうです。さらには、良材であればあるほど売れないとか。

実は良材というのは、先ほどもお話ししましたように節がなくて木目が綺麗に出る建築材料が取れる丸太で、それらの綺麗な材料は、今まで主に和室、お座敷の造作材として使われてきました。

お座敷にはちょっとくらいお金がかかってもいいから良い材料を使いたいと、世の中の誰もが思っていた時代があるんですね。

節のない柱や、目の綺麗な天井板など、手間をかけて丁寧に乾燥と製材をして、西川の良材はとてもとても高価な建築材料となって流通してゆきました。

ところが、お座敷を作るお宅は、今ではほとんど無くなってしまいました。和室が一部屋もない家も多いですよね。となると、良材の嫁ぎ先が無くなってしまうわけです。

良材はあるけれども売れないというのは、こうした背景があります。

西川の原木市場も賑わっていると書きましたが、その多くは良材というよりも一般材、節があって柱などに加工され、家が完成すると見えなくなってしまう、そういう材料になる丸太です。

手塩にかけて育て上げてきた良材ではなく、どちらかというと、語弊はありますがほったらかしになっていたような材料のほうが売れる。それはつまり、見えなくていい、綺麗でなくていい、つまり安く買えるからです。

森を育てる人も安いものを売っているだけではダメです。それでは、林業を持続的な生業とすることは難しい。

この点が、今の山と森と林業と木材の大きな問題になっています。

和室の復権を唱えていても仕方がありません。もっともっと今までと違う木材の価値観を生み出して、お金として山に還元させることが必要です。

市場の長老は、今の市場を見て、ここは原木市場じゃなくて、原木の処分場だと嘆いていました。

補助金で切り出してきた間伐材が山積みされている原木市場というのは、たしかに処分場ということになるのかもしれませんが、やはり、それは、とてもとても悲しいことです。

私達 設計者は、木の魅力をユーザーに伝え、価値を創造してゆく必要がある。そうしなくては、日本の山から良質な木材資源が失われていってしまう。貧困な山に囲まれた日本の未来の姿なんて、誰もが見たくない。たとえ、小さなことであっても、一歩一歩、進んでゆくこと。木の魅力を多くの人に伝えてゆくことの大切さ。我々に何が出来るのかを、改めて考えさせられた日でした。


(初出:キノイエセブンFacebookページ 2015年2月11日 古川泰司)


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