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路地奥の木の家

更新日:2020年2月14日



松原正明さんが設計されたお宅は路地状敷地の奥に「こんにちは」と顔をのぞかせて私を迎えてくれた。典型的な都心部の狭小地でお隣さんとの間隔もギリギリ。その悪条件を松原さんは見事にひっくりかえし、敷地を目一杯使いながら快適な暮らしを提案されている。


その一つが窓の大きさと無駄のない配置の仕方だ。ともすると、窓は大きい方が良いと思われがちだが、お隣さんが迫っている環境では大きな窓はプライバシーが保てないので落ち着かない。そこで、より有効に自然の光が入り風が抜ける窓を計画する必要がある。



一番印象的なのは、二階リビングのコーナーを切り取った低めの窓。この窓一つでリビングに光を入れているのだ。でも、よくよく観察してみると、アプローチの路地方向を除いたら、この敷地で唯一外が開けている方に向け、狙い澄ませてこの窓は開いていることがわかる。近くにお隣の窓が見えてしまっては部屋にいても落ち着かない。ましてやリビング。窓一つでリビングの居心地が変わってくる。とても計算された位置にこの窓はあって、うまく敷地の周辺環境を取り込んでいる。 この窓は通風にも効果的だ。対面側の食堂にも窓があり、この二つの窓が風の通り道としてもうまく機能している。 そして、ぎゅっと絞り込んだこの窓の美しいこと。 窓は大きい方が良いと思っている方も多いけれども、絞り込むことで光の陰影がうまれる。陰影が出てくると、空間の表情に豊かさと奥行きがうまれる。限られた空間を存分に楽しむためには、様々な工夫を我々設計者はする。広く開放的にできるだけ大きな窓をとる方法もあるが、あえて窓を小さくして陰影を楽しむこともできるのだ。


この窓は左右に引き分けて完全に開放される。そこには、ちょっと座りたくなるようなちょうど良い高さの収納があり、窓辺で楽しく過ごせる工夫があって、一つの窓でも味わい深く設計されている。 たかが、窓一つ、されど窓一つ。である。


居間の絞った窓の対面にある東側食堂の窓と階段


コーナー窓を外から見る(植栽後)




(設計: 木々設計室・松原正明/レポート:アトリエフルカワ・古川泰司)

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