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数寄屋素材を現代の住まいに


数寄屋とは茶室のこと。日本が育んできた文化は、現代住宅でも受け継ぎたいものですね。とはいえ、本格的な茶室をこしらえるわけではありません。その伝統的意匠を活かし、モダンに仕立てることをテーマとした事例を紹介します。


キッチンから小上がりの和室を見た様子。障子の桟は、デザイン組子。「あみだくじ」みたいですね(笑)モダンなリビングに対し、障子もモダンなデザインとしました。キッチンの背面(写真左手)には、洗濯機の置かれた洗面脱衣室。障子を開けておけば、キッチンから和室でお昼寝する子供の様子を見ることができ、かつ家事動線をコンパクトに計画しています。

障子を壁中に引き込んだ様子。障子の敷居すべりは、厚さ3mmもある「さくら」。天井は「焼竹網代」、押え竹は「煤竹」。襖は、桂離宮の襖を模した市松。江戸時代から続く和紙問屋さんからお取り寄せ。青は斐伊川手漉純楮紙の草木染、白は越前手漉純楮の奉書紙です。


縁甲板の仕上げは、名栗(なぐり)。名栗とは、表面を刃物ですくい取るように削り、凹凸を出すひと手間加えた仕上げ。元々は、柱や梁の下処理だったのですが、利休が茶室に持ち込んだ詫びた世界観であり、使った道具や手づくりの痕跡を残す味わい深いもの。優しい手触り、足触りであり、座り心地が良いのも魅力。


襖の脇には「出文棚(いだしふみたな)」ならぬ、読書・パソコンデスク。足元は、腰掛けしやすいように掘り込んでいます。縁側に面した2組の横繁障子は、それぞれ右手の壁面に引き寄せられ、引き残し無しの全面開口となります。あみだくじ障子の横桟の間隔は、無秩序なランダムピッチに見えますが、こちらの横繁のピッチと揃えて、統一感を持たせています。


根來宏典/根來宏典建築研究所

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